エシカルハウスの家に暮らす

新潟市西区 S様

エシカルハウスの家に暮らすお施主様の様子を取材してご紹介します
 

杉板とそとん壁が味わい深い、50坪の土地に立つ片流れ屋根の家

 
 
※本記事は住宅情報WEBマガジン Daily Lives Niigata による取材記事です。

 

小屋のようなポーチがかわいい外観

2022年6月下旬、新潟市西区の住宅街に立つSさん夫婦の住まいを訪ねました。
南向き50坪の土地に立つ延床面積36.7坪の住まいで、片流れ屋根を組み合わせたすっきりとした外観が特徴です。
菅原建築設計事務所と言えば、日本的な切妻屋根を用いることが多い印象がありましたが、モダンさを感じさせる片流れ屋根の家もつくっています。
 

 
特にSさんの住まいの場合は、北側斜線制限もあり、片流れ屋根にすることが合理的だったそうです。
外壁材は、菅原建築設計事務所定番の杉板とそとん壁の2種類の組み合わせ。杉板はファサードラタンと呼ばれる目透かし張りで、近年菅原さんが用いることが多い張り方です。
 
 

建物手前に見える小屋のような部分は、ポーチと玄関。駐車スペースがある左からも正面からも入れます。
玄関ドアは少し奥まった場所にあり、外からの目が届かないように計画されています。屋根と壁に守られたポーチは、雨や雪の日に一呼吸置けるスペースで、宅配便の荷物を置いてもらうのにも重宝しているのだとか。
今後は自転車置き場としても活用していくそうです。

 

高断熱住宅の実績が豊富な菅原建築設計事務所へ

Sさん夫婦は共に新潟市出身で、2歳と0歳の2人のお子さんを育てています。
「以前は江南区のアパートで暮らしていましたが、長女が生まれると手狭に感じるようになり、家を建てることにしたんです。土地を探しながら、同時に住宅の相談カウンターに行ったり、いろいろな住宅会社のモデルハウス見学に行ったりしました。そうして家づくりについて学んでいく内に、断熱性能が大事だと思うようになったんです」とご主人。

 
 
高気密高断熱住宅を手掛けている住宅会社や工務店を調べ、3社程度に絞り込んだというSさん夫婦。その内の1社だった菅原建築設計事務所に問い合わせをしました。
「家が完成する1年くらい前に菅原さんの事務所と自宅を訪問しました。真夏だったんですが、2階を含めて家中どこにいても快適な温度で驚きましたね。アパートでは、夏は暑く冬はとても寒かったので、菅原さんが建てる家に住めばそれがなくなるんだ…と思いました」(奥様)。
「それに、設計の自由度が高く、私たちの考えや要望を取り入れてくださる姿勢にも惹かれ、お願いすることにしたんです」(ご主人)。
 

 

間接照明の柔らかい光があふれる玄関

では、完成したお住まいの中を見せて頂きましょう。
玄関ドアを開けると、奥のリビングへと視線が抜ける伸びやかな空間が広がっていました。
 

 
Sさんの家の床は柔らかい杉材を基本としていますが、傷が付きやすく目立ちやすい玄関ホールの床は堅いブナの集成材を使用しています。
上がり框の下に空間をつくって間接照明を仕込み、浮遊感をつくり出しているのも特徴です。
左手には空間と一体になった造作の下駄箱、その上の壁は左官職人さんが手塗りで仕上げた中霧島の塗り壁が広がっており、天井に仕込まれた間接照明が陰影を際立たせます。
 

 
玄関に光を採り込む窓を見ると、窓回りの壁がかなり厚いのが分かりますが、これこそが菅原建築設計事務所の家の高断熱の秘密です。
一般的な充填断熱の木造住宅では、壁内に105mmの断熱材が入れられますが、菅原建築設計事務所の家では105mmの高性能グラスウール(密度16K)の外側に、さらに105mmの高性能グラスウールを付加して210mmにしています。
その厚みが窓回りの壁の厚さに現れています。
 

 
断熱性能を示すUA値は0.27でHEAT20G2の基準である0.34を余裕で切る性能値。気密性能を示すC値は0.1と、施工力の高さもうかがい知ることができます。
玄関を振り返ってみると玄関ドアの横に姿見が付いているのが見えますが、その中は2.25畳のシューズクローク。ベビーカーなどのかさばるものもすっきりと格納できます。
 

 
写真左手に見えるのは照明が仕込まれた展示スペースで、帰宅するとすぐにお子様がつくった作品が迎えてくれます。
 

玄関近くに配された水回り動線

家に帰ってきたらすぐに手を洗ったり、お風呂に入ったりできる動線にしたい。そんなご夫婦の希望を元に菅原さんが設計したのは、玄関ホールから近い位置にまとめた水回りゾーン。
 

 

リビングと洗面室の間に建具はなく、スムーズに洗面台に向かえます。
質感が心地いい木製天板を使った造作洗面台は奥様のドレッサーを兼ねており、普段は椅子を置いて使っているそうです。鏡の中は収納になっており、化粧品やこまごまとした物を収納できます。
洗面室の右手はトイレで、左手は脱衣室兼物干しスペース。
 

 
洗濯機の上には衣類がふわふわに仕上がるというガス乾燥機の「乾太くん」が置かれていますが、意外にも冬場はほとんど使わなかったとか。
「冬は床下エアコンで家の中が乾燥しやすいため、室内干しでよく乾くんですよ」(奥様)。
 

夏の日射遮蔽・冬の日射取得が計算されたリビング

次にLDKを見てみましょう。
階段を含む17畳のリビング、4.5畳のダイニング、5.5畳のキッチンを合わせた27畳の空間が広がっています。
 

 
床は柔らかい杉の無垢フローリング。冬場は温かく、夏はさらりと気持ちいい自然素材です。その質感の良さは、はだしはもちろん靴下を履いていても感じられます。
 

 
お子様たちがまだ小さいこともあり、リビングにはソファなどの大きな家具は置かず、空間全体で伸び伸びと遊べるキッズルームのように使っています。
 
 
窓側にはSさん夫婦が希望した吹き抜けがあり、その広さは4畳。1階だけでなく2階の窓からもたっぷりと光が注ぎ、奥にあるダイニングにも光を届けます。
 

 
南側の窓をとても大きく設けていますから、夏場は暑くなり過ぎるのでは…?と心配になりますが、しっかりと太陽高度を計算した上で庇が設計されているため、その心配は無用。
訪れたのは夏至に近い午後でしたが、室内に日差しは入っていませんでした。
 

 
一方で、太陽高度が低くなる冬場は日差しがたっぷりと室内に注ぐため、高い断熱仕様と相まって、リビングはポカポカと暖まるのだそう。
奥のダイニング側から窓を見ると、外は眩しいほどの明るさですが、家の中は穏やかな光で満たされており、公園の東屋にいるような、海の家からビーチを眺めているような安ど感に包まれます。
 
 
リビングの一角にはスタディーコーナーが設けられています。
 

 
「ここは子どもたちのためにつくった場所で、長女がもう少し大きくなったらここでお絵描きをしてもらったりしようと思っています」とご主人。
180cmの幅があり、勉強を教えたり、子どもたちが2人で並んで使ったりするのにも便利そうです。デスク下の目立たない場所がWi-Fiのルーター置きになっていたり、右手に小さな引き出しが一つだけ付いていたり、正面は書類を留められるコルクボードになっていたり。シンプルでありながら使い勝手の良さが細かく考えられています。
また、デスクの右下の塗り壁には家族4人の手形が刻まれています。家が完成した当初はまだ生まれていなかった下のお子さんの分は、あらかじめスペースを空けておき、後から手形を付けたのだそうです。
 

冬に活躍する非断熱のパントリーも

リビングの奥にあるダイニングには、クルミの一枚板を使ったオーダー家具が置かれています。「テーブルの天板は私たちがサンプルを見て選び、菅原さんから家具屋さんにオーダーをして作って頂いたものです」(ご主人)。
 

 
テーブルの隣の引き違い戸の中は収納スペースで、こちらにはストック品を中心に収納。奥にある造作棚には書類やアルバムなどが入っています。
 
 
右下の格子の奥に見えるのは床下エアコンで、菅原建築設計事務所では定番の仕様。冬場はこのエアコン1台で家の隅々までを暖められます。
 

 
「冬はエアコンを24~25度に設定していました。僕は寒いと感じることはなく、冬でも半袖で過ごしていましたね」とご主人。
奥様は「私は多少寒いと感じることもありましたが、寝る時は掛け布団1枚で過ごせるようになりました。毛布やタオルケットなどは使わなくなりましたね。あと、杉の床が温かくて、遊びに来る友人から『床暖を入れているの?』と聞かれることが多いです」と話します。
 
 
ダイニングの隣には対面式キッチンがあり、キッチン背面には収納がたっぷり設けられたカップボード、奥には非断熱にしたパントリーが設けられています。
 

 
非断熱のパントリーは、冬は外気温に合わせて室温が下がる、いわば天然の冷蔵庫。野菜や果物などを長く保存するのに適しています。
 

2階のフリースペースはフレキシブルな空間

次に階段を上がって2階へ行ってみましょう。
 

 
木製スケルトン階段は明るく軽やかで、空気の循環にも役立っています。
 
 
2階には3つのスペースがあり、1つ目は階段そばにある奥様の寝室。こちらは6畳の空間で、奥様と下のお子さんがここで寝ています。
 

 
その奥にある6畳の部屋はご主人の書斎兼寝室で、幅1.8mの大きなデスクと吊り棚が造作されています。
 
デスクの正面に窓が切られており、日中は自然光で作業がしやすそうです。夜はご主人と上のお子さんの2人で寝ています。
 
そして3つ目は、将来的に間仕切りを作って2つの個室をつくれるフリースペース。
 

 
広々とした空間は、現在は子どもたちの遊び場として活用しています。
 
 
室内には菅原さんオリジナルの可動クロゼットがあり、これを使って部屋を仕切ることもできます。
 

 

暑さ寒さのストレスを感じない健やかな温熱環境

高い断熱性能を備え、自然素材がふんだんに使われたS邸。改めて気に入っていることを伺いました。
 

 
「室温によるストレスがなく、1年中快適なことに満足しています。冬外が寒い日も体が冷えていない状態で出られるので気持ちよく動けますし、均一に家中が暖まるのがすごく自然な感じでいいですね。夏は2階のエアコン1台だけを使っていますが、冷やっとする感じがありません。それから、リビングが広く、子どもたちが伸び伸びと遊び回れるようになったのも良かったことですね」とご主人。
 

 
「私も主人と同じ感想ですね。あと、私は傷や汚れが心配で無垢床は反対派だったんです。でも、1年過ごしてみて今では良かったと思っています。本物の素材に触れることは子どもたちにとってもいいことですし。傷はつきますが、それも思い出としていいのかなと考えられるようになりました」(奥様)。
 

 
夏・冬はエアコンで、春・秋は換気システムだけで快適さを保つSさんの住まい。杉板や塗り壁に包まれた心地よい空間には、穏やかでリラックスした時間が流れていました。
 

 
S邸
新潟市西区
延床面積 36.7坪
竣工年月 2021年7月
設計・施工 エシカルハウス 株式会社菅原建築設計事務所
写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平