エシカルハウスの家に暮らす

阿賀野市 W様

エシカルハウスの家に暮らすお施主様の様子を取材してご紹介します
 

祖母の家の敷地内に新築。桧の床とブナの家具が溶け合う住まい

 
 
※本記事は住宅情報WEBマガジン Daily Lives Niigata による取材記事です。
 

結婚後、会津から阿賀野市へ移り住む

2023年6月に訪ねたのは、阿賀野市に立つWさん夫婦の家。
 

 

右側にはご主人のおばあさんが住む古い家があり、道を挟んだ向かいにはご主人のご両親が暮らす実家が立っています。
 
「僕はここの出身で、妻は宮城県出身。僕たちは2014年に結婚し、その頃は福島県の会津に住んでいましたが、妻が長男を妊娠したタイミングでこっちに移り住み、はじめの5年程は祖母の家の2階で暮らしていました」とご主人。
 
大正時代に建てられ改築を繰り返してきたというおばあさんの家。夏は暑く冬はとても寒かったそうです。
 
「西日が差し込む場所にトイレがあるので、夏に入ると汗だくになるんです。冬の脱衣所はとても寒かったですし、1階の廊下の床が冷たくて足が霜焼けになっていました」とご主人。
 

「冬の晴れた日は外の方が暖かいくらいでしたね。寒波が来るとトイレの水が凍って流れなくなることもありました」(奥様)。
 
 

そんな経験から、Wさん夫婦は断熱性能が高い家を建てようと考えていました。
 
「はじめは別のハウスメーカーで打ち合わせを進めていたんですが、担当者に断熱性能を示すUA値や気密性能を示すC値がどれくらいになるのかを尋ねても、なかなか数字を出してもらえませんでした。ようやく教えてもらった数字も期待していたものではなかったですね…」とご主人。
 
だんだんと不安になり、住宅情報誌を読みながら、改めて断熱性能に力を入れている会社を探し始めたといいます。
 
「いくつかの会社に話を聞きに行きましたが、菅原さんの新発田の完成見学会を訪れた時にしっくりときました。桧の床や造作家具の感じがよくて、とても明るい雰囲気でした。性能のことも詳しくご説明を頂き、菅原さんにお願いすれば納得できる家をつくって頂けると思いましたね」(ご主人)。
 

そうしてそれまで打ち合わせを進めていたハウスメーカーに依頼するのをやめて、菅原建築設計事務所に正式に申し込みをしました。

 

杉板とそとん壁がつくる、落ち着いた佇まい

「希望したのは、使いやすい収納や回遊できる動線など、家事が楽になる家でした」と話すのは奥様。その要望を盛り込み、日射遮蔽や日射取得のバランスを考えながら菅原さんはプランを考えていきました。
 

 
通りから見るファサードは、平屋部分と2階建て部分が連なったきれいな切妻屋根が印象的です。1階部分の壁は杉板、2階は塗り壁(そとん壁)と、2つの素材を使い分けるのが菅原建築設計事務所の特徴。
 
杉板の壁はすのこのように張るファサードラタンと呼ばれる張り方です。
 
 
杉板は30mmの厚さがあり重厚さが感じられます。
 

 
ポーチは深い軒と格子が設けられており、雨や雪、外からの視線を遮ってくれます。
 
 
日中、ポーチから外の様子はよく見えますが、外からはポーチの中がほとんど見えません。
 

 
玄関ドアは高い断熱性能を持つオーダーメードの木製ドア。鋼製ドアと比べると雨風や紫外線の影響で劣化しやすいところが木製ドアの欠点ですが、雨も紫外線も当たらないように設計された玄関ドアは、竣工後1年半の時を経ても新品同様の美しさを保っていました。
 

 

自然素材に包まれた玄関

玄関ドアを開くと、その先は間接照明の光が輝く玄関です。
 

 
天井、下足入れの下、上がり框の下の3カ所に仕込まれた間接照明が、塗り壁や桧の床、豆砂利洗い出し仕上げの土間などの天然素材を照らしています。
 
 
浮遊感のある下足入れはブナ材で造られたもの。明るい色のブナは他の木にはない爽やかさがあふれています。
 

 
玄関横のスイングドアを開けると3畳のクロークにつながります。
 
「ここには僕の釣り道具やゴルフ用品、バーベキュー道具やキャンプ用の椅子などを収納しています。冬に子どもたちのスノーウエアを掛けておくのにもいい場所です」(ご主人)。
 

仏壇を置くことを見据え、玄関の隣に和室を配置

玄関ホールの先にはリビングが続きますが、障子で仕切られたすぐ隣の和室に直接入ることもできます。
 

 
「お盆などに親戚が仏壇にお参りに来た時、リビングを通らずに玄関から和室へと直接入れる動線にして頂きました。和室の左奥に見える収納は将来的に仏間として使えるようにしています。この和室は今は子どもたちの遊ぶ場所になっていますね。リビングとの間の障子は外して、リビングと一体にしています」(奥様)。
 
 

 

桧の床が心地いいリビング&ダイニング

この家のメインの空間であるリビングダイニングは14畳。幅2間(約3.6m)×奥行3.5間(約6.3m)の構造的に安定感のある空間です。
 

 
TVボードは壁と一体にしてすっきりと。その両サイドからお店のバックヤードのような裏動線へ回れる設計です。
 

 
南側には9尺(約2.7m)幅の開口部があり、窓を開ければ軒のあるウッドデッキへと出られます。
 
 
こちらの軒は中央部分にガラスがはめ込また特殊な仕様。雨や雪を防ぎながらも冬場の日射をたっぷりと採り入れることができます。
 
 

 
木目がきれいなミズナラのダイニングテーブルとベンチは、菅原さんが家具職人に製作を依頼したオーダー家具。
 
 
椅子はナガノインテリアのichimaru/DC352-1W(左)と宮崎椅子製作所のPePe arm chair(右)。Wさん夫婦が何度もインテリアショップに足を運び、それぞれが気に入った椅子を吟味したのだそうです。
 

 
ダイニングテーブルの奥は、下足入れやTVボードと同じブナ材で造られたスタディーコーナーです。引き出しや扉がしっかりと造り込まれていて、散らかりがちなものをすっきりと収納できます。
 

 
「子どもたちにリビングでも勉強ができるようにしてあげたいと思い、このスタディーコーナーを設けました」(ご主人)。

収納がたっぷりと設けられた洗面脱衣室&キッチン

ダイニングの奥の引き戸を開けると、そこには洗面脱衣室がありました。
 

 
中央に造作の洗面台があり、その左には引き戸で仕切れる脱衣スペースと浴室が。右手には洗濯機が置かれています。
 
そして、そこから右へ進んだところにはキッチンがあります。
 
 

 
キッチンは行き止まりにあることが多いものですが、こちらのキッチンは回遊動線上。洗面脱衣室、リビング、ダイニング、2階、クロークなど、家の中のあらゆる場所と短い距離で行き来できるのが特長です。
 
「収納がたっぷりあるカップボードを造って頂きました。1畳分のパントリーも便利です。パントリーの引き戸をホワイトボードにして頂いたのですが、ここに買い物リストを書いて写真を撮っておくことで買い忘れが少なくなりました。それから、ボッシュの食洗機は予洗いせずに入れてもきれいに洗浄でき、とても助かっています」(奥様)。
 
 
キッチンは面材にパイン材を使ったウッドワン製。造作カップボードも同じようなパインの面材を使い、引き出しの取っ手のデザインもそろえることで統一感を生み出しています。
 
こちらがキッチンから見たリビング&ダイニング。
 

 
キッチンから室内の様子はよく見えますが、キッチン前の壁を高めにすることで、ダイニング側からワークトップが見えないようにしています。
 

 

家中が暖かく、物干しや収納も快適に

次に階段を上がって2階へ行ってみました。そこには5畳程のホールがあり、物干しスペースになっています。
 

 
「以前は冬に洗濯物を干すときに、ストーブ・除湿機・扇風機を使っていましたが、それでも乾きにくかったです。洗濯物を干す場所が1階の寒い場所でしたので、ジャンパーを羽織って干しに行っていましたし、どっちが洗濯物を干すかで夫ともめることもありました(笑)」と奥様。
 
家中が暖かくなった今は、そんなストレスもなくなったそうです。
 
ホールの隣は10.5畳のフリールームで、中央に置かれたキャスター付きのクローゼットが間仕切りの役割を果たしています。
 
 

 
このクローゼットにより、空気を循環させながら部屋を分けることができますし、置き方を変えることで部屋の広さを調節したり、2つの部屋をつなげたりすることもできます。
 
「今は片方の部屋をファミリークローゼットにしていて、もう片方を子ども部屋にしています。ホールで干したものをすぐ隣の部屋で収納できるのが便利ですね」(奥様)。
 
ちなみにW邸では1階の天井に天井埋込カセット型のエアコンを入れており、その温風や冷風を1階・2階それぞれの床のガラリや1階の天井から放出させる全館空調を採用しています。
 
 

 
1階の床下へはダクトを使って温風を送り込む仕組みで、冬場は1階も2階も足元から暖められます。
 
 

冬の朝もつらくない。活動的になれる家

この家に住んで満足していることを伺いました。
 
「冬、家に入った瞬間から暖かいことですね。前はストーブをつけている部屋以外はとても寒かったですし、布団に入って寝ている時に吐く息が白くなっていました。寒さで頭が痛くなることもありましたし、灯油代も大変でしたね。そんな冬の悩みがなくなりました」(奥様)。
 

 
「以前は羽毛布団を使っていましたが、今は真冬でも毛布1枚で寝れるようになりました。朝起きる時も家中が暖かいのですっと起きれます。活動的になり、趣味の釣りもよく行くようになりましたね。夏場は家の中が涼しいだけでなく、カラッとしていて過ごしやすいです」(ご主人)。
 

 
設計のポイントについて、菅原さんはこう話します。
「特別なことをするのではなく、基本に忠実に設計をしました。南面などの日射取得をしやすい窓はペアガラスを使い、それ以外はトリプルガラスを使っています。外観に関しては下屋部分のバランスに気を付けて設計しました。それから、Q値=0.80、UA値=0.27、C値=0.3で、太陽光発電パネルを4.1kW載せており、ほぼゼロエネルギー住宅になっています」。
 
 
新しい家では、庭いじりをしたり野菜を育てたりするのも新たな楽しみになったそうです。
 
「家で過ごす時間が充実するようになりました。庭にソヨゴやマルバノキを植えましたが、今後もっと植栽を増やしていきたいですね」とご主人。
 

 
不快な寒さや暑さの影響を受けにくい新居に住み、さまざまな活動を楽しめるようになったWさんご家族でした。
 
 
W邸
阿賀野市
延床面積 38.91坪
竣工年月 2021年12月
設計・施工  エシカルハウス 株式会社菅原建築設計事務所
写真・文/Daily Lives Niigata  鈴木亮平