コンテンツへスキップ

理くん、次世代省エネルギー基準ってなに?

次世代省エネルギー基準っていうのは、国が決めた住宅の省エネルギーに関する基準なんだ。断熱性・気密性を高めることで冷暖房の効率がよくなり省エネルギーになるということで、断熱と気密に関する基準が定められているんだよ。

あれ? さっき、長期優良住宅の認定基準の話が出たとき「省エネルギー性」が項目に含まれてなかった? それと、次世代省エネルギー基準って別なの?

え~っと……それは……もっちゃんに説明してもらおうか。

分かったようなこと言ってて、本当はしっかり理解していないんじゃないの、理くん。

ははは。

佳織さんに一本取られましたね。

めんぼくない……。

では、私がご主人に変わって、説明させていただきますね。
次世代省エネルギー基準は、平成11年3月に国が定めた住宅の断熱性能に関する基準です。
ご主人がおっしゃったことの繰り返しになるかもしれませんが、断熱・気密性能をあげることで冷暖房にかかるエネルギー消費量を減らそうということ。そして、家全体を冷暖房することで身体への負担を減らすよう家全体で断熱性能を計算するようになっています。
さきほど少しお話しさせていただいた換気や冷暖房に関する基準も含まれているんですよ。

エネルギー消費量か……。

そう、先ほどの佳織さんの質問はとっても良い質問なんです。
じつは、長期優良住宅の仕様基準「省エネルギー性」の認定概要には「次世代省エネルギー基準に適合すること」と明記されているのです。つまり、長期優良住宅の認定条件の断熱性は次世代省エネルギー仕様に準じるということですね。

じゃぁ、長期優良住宅の「省エネルギー性」の認定をクリアするためには、次世代省エネルギーの基準をクリアしなければいけないということですか?

そういうことになりますね。次世代省エネルギー基準にそって住宅を作ると、長期優良住宅の「省エネルギー性」に関する基準はクリアできるということです。

いま建てられている家は、次世代省エネルギー基準にそって造られているのですか?

いえ。国は2020年には次世代省エネルギー基準の義務化を目指していますが、現段階ではまだ義務化されていないんです。

じゃぁ、次世代省エネルギー基準にのっとって建てられていない住宅もあるってことですよね?

えぇ、そうなんです。断熱・気密性能値に言及している一部の住宅会社をのぞいては、次世代省エネルギー基準以下のレベルであることが多いです。大事なのは…、前にお話ししましたが、そもそも「次世代省エネルギー基準」自体が、まだまだ全く不十分だという事です…。

あ、そうか。「国の基準を満たせば安心」というイメージをしてたので、さっきお聞きしたことも頭から抜けてしまってました。

いえいえ、大丈夫ですよ。そもそも、住宅業界では、耐震基準や使用素材の規制など様々な基準や線引きがあるのですが、残念なことに「義務化されたものさえ満たせばいい」と考えている風潮があるんです。ですから、2020年に次世代省エネルギー基準が義務化されたとしても基準をクリアすることが目的になってしまうんじゃないかな。

なんだか腹の立つ話だよね。

そうですね。本来は、住宅業界全体が、国の基準をはるかに上回る良い家を造るため、研究、切磋琢磨し、力を尽くしていかないといけないんです。そのために私も微力ながら新潟地域の一般の方だけでなく、建築会社の方も対象にしてセミナーや勉強会・現場の見学会を開催しています。

そうなんですね。私も良い家を建ててくれる住宅会社がもっと増えてほしいです。

おっしゃるとおりです。業界全体の理念、技術レベルを底上げして、お客様からより信頼される業界になってゆく必要があると思います。そうすれば、お客様も安心して我が家を任せられる会社が増えますからね。
話は戻りますが、次世代省エネルギー基準についてもう少しだけお話させてください。
この話を頭に入れていただくことで、住宅展示場や見学会に行かれたときに良い家を簡単に見極めることができるようになりますから。

あ、それは知っておきたいです。

新潟の気候風土にあった良い家かどうかの見極め方は簡単です。
住宅展示場や見学会に行かれたとき、たった一言、営業マンや建築士に「お客さまの住宅の、C値とQ値は?」と聞いてみて下さい。

C値とQ値?

はい。C値というのは気密性をあらわす値で「家のすき間の小ささ」のことです。C値が小さいほど気密性能が高い建物ということになります。気密性が高いというのはイメージできますか?

はい、大丈夫です。

もう一つのQ値は、断熱性能をあらわす数値です。建物からどれくらい熱が逃げているのかをあらわす値です。Q値が小さければ小さいほど、断熱性能の高い建物になります。

C値もQ値も小さいほうが良いんですね。

はい。そして、次世代省エネルギー基準は地域ごとにC値やQ値の基準が定められています。
新潟市の場合では、IV地域なので、C値は、5(c㎡/㎡)でQ値の基準は2.7(w/m2k)です。

なんだか、難しい感じがしてきました…。

C値が5で、Q値が2.7と覚えておくといいよ、佳織ちゃん。

うん。

建設会社の営業マンや建築士に「C値」と「Q値」をきくことで、その会社の建物が気密や断熱に関してどれくらいの配慮をしているかがわかるんです。「断熱」や「気密」に関して意識の低い会社であれば、そもそも気密の測定もしていませんので、C値、Q値を即答できません。

なるほど! たしかにそうですよね。参考になりました。

ただし、さきほどもお話ししましたが、基準を満たしていればOKというわけではないんです。
家じゅうを冷暖房すると、この数値では、従来の2倍もの冷暖房費がかかってしまい本末転倒になってしまいます。ですから、新潟で快適で健康的かつ省エネな家は、Q値1.6前後(理想は1以下)、C値も1以下ということを頭の片隅に置いておいていただければと思います。

Q値1.6以下、C値は1以下 ですね。メモしておこうっと!

あ、それからもうひとつ面白い住宅性能の見分け方を…。
住宅展示場などに行かれた際には、エアコンの室外機の台数を数えてみてください。
それでエアコンが何台あるのかわかりますよね?

あ、わかりました!エアコンの台数が少ないほうが、断熱性能が良い可能性が高いということですよね?

さすが松井さん、そのとおりです。

わかりやすいですね。今度、展示場に行ったらチェックしてみよう…

あ、あともう1つだけ…。

結露って夏にも起こるのですか?

はい。建物の結露は冬に発生するものと思っている方が多いようなのですが、実は結露は夏も発生するのです。ただし、冬と夏では、それぞれ結露が発生するメカニズムが異なります。
冬は寒いので室内を暖房で暖かくしますよね。そうすると、暖められた空気は外へ逃げて行こうとします。でも、夏は冷房を使用している。外は高温多湿で、室内は冷えているので、水蒸気は外から室内に向かって流れていきます。

あ、もしかして……夏は冬とは逆に、外から内へ水蒸気が流れていくようになるのですか?

そう、大正解! 冬は、暖房で暖められた空気が外に向かって流れていきます。でも、夏は外の空気が室内側に向かって流れるんです。水蒸気の流れが逆になって、結露する場所が冬とは逆になるので夏の結露のことを「逆転結露」と呼んだりもします。

逆転結露、ですね。

はい。「水蒸気が冷えた部分に当たると結露水が発生する」と表面結露の説明をさせていただいた時にお話ししましたが、これは内部結露も同じです。壁の中に水蒸気が入り込むと、冷えた部分に結露が発生する。ただし、冬と夏とでは壁内でも冷えている部分が異なります。

冷えている部分…。冬は外壁側で、夏は室内側ということでしょうか?

その通りです。薪を割るような感じで、住宅の壁をスパッと縦に割った様子を思い描いてみてください。壁の中は断熱材だけではなく、先ほどお話しした防水気密シートや透湿シートなど、様々な部材が入っているのですが、わかりやすくお話しさせていただくため、ここでは細かな部材は抜きにしてお伝えします。壁は、外側から外壁、断熱材、内装材(壁紙や土壁など)という作りになっているとイメージしてみてください。

サンドイッチみたいだね。外壁と部屋の壁がパンで断熱材などが具材。

ははは、そうですね。分かりやすい例えですね。
外側からは見えませんが、壁の中にはいろいろな部材が入っていて、縦方向に幾層かに別れていますからね。さぁ、その壁の中ですが、冬は外壁側の温度が低く、夏は室内側の壁の温度が低いというのはわかりますね?

はい、大丈夫です。

壁の中に入り込んだ水蒸気は壁の中の冷えたところにぶつかって結露します。
とすると……冬と夏では結露水が発生する場所が違うのが分かると思います。

あっ、冬は外壁側、夏は室内側の壁で結露するってことですか?

その通り! 水蒸気の流れだけではなく、結露が発生する場所も逆になるので、逆転結露なんですよ。

冬の結露しか考えていなかったら、夏に結露が発生すると聞いてびっくりしました。

そうですね。冬は表面結露が起りやすく、表面結露は目に見えるものですから、結露=冬というイメージがあるのだと思います。ただ、夏の暑さと暑さ対策の冷房ということを考えると、状況的には冬と同じなんですよ。また、夏は日射しが強いですからね。太陽の熱が外壁を支えている胴縁、柱などに伝わり、そこから水蒸気が発生します。この水蒸気が壁の中に入っていく。これを、「蒸し返し現象」といいます。

見えないだけで、夏も結露が発生しているんですね。新潟の夏はとっても蒸し暑いから、実は家のあちこちで内部結露が発生していて家を腐らせている……とか?

そうですね、新潟は冬の寒さも厳しいですが、夏の蒸し暑さもなかなかこたえますからね。
ただ、すべての結露が家を腐らせるのではなく、許容量を超えた結露が悪さをするという感じでしょうか。さきほどの、「蒸し返し現象」で発生した結露水も、夕方になって気温が下がると、木材は調湿機能がありますから、ある程度は木材に吸収されるので許容量を超えなければ心配いりません。

壁の中に結露水が溜まらなければ良いということでしょうか?

はい、壁の中での結露を防ぐためには、室内で発生した湿気を壁の中に入れないことも大切ですが、壁の中に入った湿気を長くためないことも重要なんです。乾燥している冬は室内から壁体内へ湿気が侵入するのを防止して、蒸し暑い夏は壁体内の湿気を屋外へ逃がすようにする。湿度がよほど過剰な場合には室内側へあえて逃がすこともあります。つまり、湿気の浸入を防ぐ「防湿」と湿気を通す「透湿」を行って、壁体内の湿気をコントロールしていくんです。

防湿と透湿…ですか。ちょっと難しい感じがします。

そうですね。詳しく説明するとなると、断熱や気密の施工方法に関係したお話になってきますから順を追ってゆっくりとお話しさせて頂くことにいたしましょう。ここでは、内部結露には冬型と夏型があり、冬は防湿をして結露を防ぎ、夏は水蒸気を排出しながら調湿をして結露を防ぐと覚えておいてください。

はい、わかりました。

さっき、「木材の調湿機能」という話が出たので、僕からも1つ質問していいですか?

あ……。夢中になって話を聞いていたから、理くんのこと忘れてた。

そうだと思った。なので、存在感を示すためにも、もっちゃん質問いいですか!

はい、どうぞ、どうぞ(笑)

湿気を調整するのは換気だけではなく、家の素材でもできるってもっちゃんのセミナーで聞いたんですが、具体的にはどんなものがあるんですか?

いい質問ですね。そう、本物の自然素材は、家の大敵である「湿気」もある程度は調節してくれるとセミナーでは、お話ししました。具体的には無垢の木や和紙、シラス(細粒の軽石や火山灰)や漆喰の塗り壁などがあげられます。床に無垢板材を使用すると、梅雨時に床のべたつき感がありません。塗り壁は臭いを吸着し、調湿効果も期待できます。

ふむふむ。

シラス塗り壁って……もっちゃんの事務所が建てた建物の外壁にも使われているものですか?

はい。私どもでは、シラス壁材を使った外壁「そとん壁」だけでなく、室内にはシラスの「中霧島壁」を使用することが多いです。調湿効果や匂いの吸着効果がある100%自然素材で廃棄するときも土に還ります。

それなら、自然素材をつかえば内部結露が防げそうですね。

たしかに自然素材はかなり調湿してくれますが、あくまで補助的なもので、一時的に湿度を調整するくらいだから根本的には換気を計画的に行うことと、さきほどもお話しましたが気密施工により室内の水蒸気を壁に入れないことが内部結露の防止策としては第一です。

自然素材って、言葉の響きだけでも良い感じがしますよね。
身体にも害がなさそうですし…

そうですね。基本的には自然素材は身体に悪いものは少ないです。ただ、無垢の木でもヒノキやヒバは若干のアレルゲンとなる物質(有機化合物)が出ます。ですから、「天然の素材だから安全」というのではなく、もしアレルギーがあるようでしたら、しっかりとアレルゲンのチェックをして、適切な素材を選択することが大切ですよ。

そうなんですかぁ、知らなかったです。

やはり木の香りのするお家はいいですよね。私どもでは無垢の木をふんだんに使って住宅を建てさせて頂いていますが、あるお客様は、引っ越す前は買い物等、外出が趣味だったけれど、今は家にいるのが一番落ち着くとおっしゃっています(笑)。遊びに来られたお友達も、とても居心地が良い家だと言って長居するのだとか。

木の香りに包まれると、心が落ち着くし、気持ちよく健康に暮らせるんですね。

そうですねぇ。科学的な根拠はありませんが、風邪をひく回数が激減したというお客様も多いんですよ。ダニやカビが減ったことで鼻炎などが少なくなったということもあるでしょうし、心が落ち着きストレスが減ったことにより免疫力が向上したのかもしれませんね。

へー。落ち着いた気分になるだけでなく、実際に健康になられた方がおられるなんて不思議ですね。

はい。本物の素材は美しく、触れ心地も良く、健康にもいい。もちろん、長く使えますし、年月とともに味わい深くなり修理や再利用もできます。処分するときも、環境負荷が小さいですしね。

あの……長く使えるということで思い出しました。話が戻ってしまうんですが、もう1つ質問よろしいでしょうか?

はい、もちろんです。どうぞ。

私、気になっていたのが、「長期優良住宅の基準を満たしていれば大丈夫というわけではない」というお話。一般的な長期優良住宅の断熱性能で家全体を冷暖房すると光熱費が2倍程かかってしまうってのはわかったのですが、どうやって断熱の性能などを判断すればいいのか、基準がわからないんです。

では、「次世代省エネルギー基準」について僕から説明しましょうか。

次世代省エネルギー基準???

壁の内部や床下などで発生する結露のことを、内部結露といいます。
表面結露は前にお話ししたように、窓ガラスや壁の表面など、目に見える部分で発生する結露のことですが、じつは、内部結露は家の骨組が腐る原因となるんです。

えっ!? 家の骨組みが結露で腐るんですか?

そう。表面結露のお話をしたとき、佳織さんは「冬になると、アパートの窓ガラスについた水滴がサッシのサンのところにたまって、サンの周りの木が腐ったりする」とおっしゃっていましたよね。

はい、そうです。結露してサンに溜まった水にカビが発生したって……。

それと同じことが、壁の内部や床下などで発生していたら?
許容量を超えた結露は、骨組みや土台など家を支える重要な部分が腐る原因となります。そして、腐った骨組みは白アリの被害にあいやすくなるんです。
家全体の耐震性を低下させる原因になりますから、放っておくと家の寿命は短くなります。

内部結露(壁内結露)で腐った構造材

え~っ! でも、どうして内部結露が発生するんですか?

結露の原理を思い出してみてください。結露は、空気中の水蒸気が冷やされて水滴になること、でしたよね。

はい。湿度と温度差によって結露ができるんですよね。

そうです。その結露が内部、つまり、壁の中でなぜ起こるかというと、室内からたくさんの水蒸気が壁の中に入ってしまう事が1つの原因です。もう1つ、温度差という意味で壁に断熱材を入れるようになってから室内と外気に温度差が出来たことも原因です。

断熱材が内部結露の原因になるんですか? でも、それじゃぁ、高断熱のお家ってよくないってことなんじゃ? う~ん?

家を暖かくする目的で壁に断熱材を入れるようになりましたが、佳織さんがおっしゃったとおり「断熱」だけじゃダメなんです。気密・防湿をせず、断熱のみ行った家では内部結露が発生する。実は、内部結露は住宅の断熱化にともない住宅業界が戦ってきた課題ともいえるのです。

内部結露との戦い……ですか?

はい。少し昔の話になりますが……といっても、お二人が小さい頃の話ですね。
1970年代に北海道で起った「ナミダダケ事件」というものがあります。

聞いたことがあります!
確か……オイルショックをきっかけに、省エネへの関心が集まり断熱性を高めようということになって、壁や床、天井に100mmのグラスウールを入れたら内部結露が生じ、ナミダダケが繁殖して床下や基礎が腐ってしまったんですよね?

松井さん、よくご存じですね! そうです。冬場、暖房で暖められた室内の空気は、冷えた外に向かって流れていきます。でも、壁の中には断熱材が入っているので熱は移動しにくい。水蒸気だけが壁の中に入り込む。熱は断熱材のおかげで壁の中には多くは行かないけれど水蒸気は壁の中に吸い込まれていくというイメージです。そして、水蒸気は壁内の断熱材の中を通っていきますが、外壁側に近づくにつれて断熱材の中も冷えていき、水蒸気が水滴になり壁の中で結露が発生します。結露水で断熱材が濡れると断熱機能が失われ室内から熱が逃げていくようになります。すると、さらに結露が酷くなっていき、木材まで濡れてしまい、そこに住宅の寿命を短くする「ナミダダケ」が繁殖したのです。

ナミダダケって、きのこですか?

はい。きのこなんですが、シイタケのようなカサはありません。白い綿のような感じで、木材にペタリと張り付き、平らに広がって成長していきます。吸収した水分を涙のように滴らせることから、ナミダダケと名付けられたそうですよ。

シロアリ同様、ナミダダケも怖いですね。

そうですね。「ナミダダケ事件」の後、どのようにして壁内の結露を防ぐか、いろいろな研究が行われ、対策がとられるようになりました。「ナミダダケ事件」をきっかけに、断熱だけではなく、室内の水蒸気を壁の中に入れないため「防湿と気密」についても考えられるようになり、高断熱・高気密住宅が登場したのです。

気密と断熱って、最初からセットだったわけじゃないんですね。

はい。
先人の知恵と研究の成果として断熱・気密が住宅に取り入れられてきたんですね。

さっき、もっちゃんが「内部結露は住宅の断熱化に伴い住宅業界が戦ってきた課題」って言ったのは、そういうことだったんだ。

えぇ、そうなんです。どのような断熱材を使ったらいいのか、気密性を確保するためにはどうしたらいいか。断熱材を入れる位置は壁内がよいのか、外壁側がよいのか。そして、大事なのは、気密による防湿。壁の中に水蒸気を入れないこと。断熱・気密化がスタートして数十年経過していますが、まだまだ研究は続いているのです。

気密を確保するというのは、断熱と気密のお話のときにあった、ビニールハウスのビニールが空気を閉じ込めているというようなイメージですか?

えぇ、そうですね。ビニールではなく、防湿気密シートというものを使っています。
材料の中の水蒸気の移動し難さを表す「透湿抵抗」という値があり、この数値が大きければ大きいほど水蒸気を通しにくい材料ということです。この透湿抵抗が大きい「防湿気密シート」を室内側に貼り、水蒸気の流れを防ぐ防湿層を作っています。さらに、隙間が空かないように気密テープをしっかり貼っていく必要があります。いくら透湿抵抗が高い素材を使っていても隙間があれば、そこからどんどん水蒸気が壁の中に入ってきて内部結露が発生してしまいます。ですから、きちんと施工を行うことが大切なんです。

なるほど。でも、結露って怖いですね。新潟は冬の寒さが厳しく、暖房器具を使わざるを得ないから、内部結露のこともよく考えて家造りを行わないと……。

その通りです。あっ、そうだ。実は内部結露には「冬型の結露」と「夏型の結露」があるんですが、佳織さんは「夏型の結露」についてご存じですか?

えっ? 夏型?ということは、夏場も結露することがあるんですか?

はい。では、冬型の内部結露と夏型の内部結露が、それぞれどのようなメカニズムで発生するか。そして、その対処方法についてお話ししていきましょう。

先ほど、湿度を適正に保つためには換気が大事とお伝えしましたが、換気に関する説明がまだでしたので、ここでお話しさせていただきますね。

はい、お願いします!

普段、換気のことってあまり意識されないと思いますが、換気ってとても大事なんですよ。
普通に生活しているだけでも時間とともに空気は汚れていきます。また、湿気もたまっていきます。湿気が結露やカビを発生させ、ダニを呼び込む。カビやダニによるシックハウス等の健康被害も心配されます。

うわぁ、なんか怖いですね。

そうなんです。ふつうに生活しているだけでホコリやガスや水蒸気が出てきます。それを室内から外に出して(排気)、外から新鮮な空気を室内に取り入れる(給気)のが換気です。
窓を開ける、換気扇を回すなど、日常で何気なく行っている行動ですが、家の換気を行っているわけですね。意識しないと見落としてしまいがちではありますが、換気はとっても大切なことなんです。

先ほど、建物内の温度差を利用して外から風を通すというお話を伺いましたが、それも換気なのですか?

はい、自然の風や温度差などを利用して行う換気のことを自然換気といいます。

あと、キッチンで換気扇を回すのも換気ですよね。

はい、そうです。こちらは、機械を使って換気を行っているので、機械換気といいます。
機械換気は給気と排気の方法をどうするかにより3つの種類にわけられます。
給気も排気も機械で行う換気方式(第1種換気)、給気を機械で排気を自然に行う方法(第2種換気)、そして給気はを自然に行い、排気を機械で行う方法(第3種換気)です。

なんだか色々出てきて難しいですね…。

第2種換気は住宅では採用されませんから、覚えておくといいのは、第1種換気、第3種換気です。

第1と第3ですね。第1種換気は給気も排気も機械で行う換気でしたよね?

はい。第3種換気は吸気が自然換気になるので家の中の空気の汚れにもばらつきが出て、適切に換気が行えない場合があります。特に隙間の多い家ですと、給気口以外の場所から外気が入ってくるので、きちんとした排気経路が確保できません。
第1種換気は、給気・排気ともに機械で行うので計画的な換気ができます。ただし、計画的な換気の前提として建物に気密性が必要です。

そういえば……冬に風が強くて吹雪が舞っていた時、換気扇を回したら雪が室内に入ってきたことがあったんです。給気も機械で行うとなると、強い力が働くので、冬場は外の冷たい風や雪が家の中に入って来るんじゃないんでしょうか。

吹雪が舞っていた時に雪が室内に入ってきたのは、換気する力より外の風の勢いの方が勝っていたんですね。じつは、第1種換気にもさまざまなタイプがあるんです。給気・排気とも、佳織さんのアパートのキッチンに設置されているようなファンを使って行うものもあれば、熱交換型の換気を使うものもあります。

熱交換型ですか?

はい。熱交換型の換気は、排気時の熱を回収して室内に戻す熱交換器を内蔵した換気システムを使って換気することをいいます。排気時の熱をムダにしないから室内の温度が大きく変わることがありません。熱交換器を通すので冬場の冷たい空気は侵入してきませんし、冷暖房費を抑えることもできますよ。

窓を開けたり、換気扇を回したりする方法しか知らなかったので勉強になりました。

そうですね。住宅の結露を防ぎ、湿度と室内温度を快適に保つために換気はとても重要なんです。換気にはいろいろな方法やシステムがありますが、計画的に換気が行える第一種換気が、健康面でも省エネ面でも良いと思います。

あ、そういえば……話が戻ってしまうのですが。結露のお話をお伺いしたときに、壁や床下などで発生している結露のお話が出たのですが……あれ、なんでしたっけ?

内部結露ですね。そちらの説明がまだでしたね、すみません。では、内部結露について少しお話しさせて頂きましょう。

「基礎の換気口から室内に空気を取り込む」というお話でしたが、床下と室内がつながっているんですか?

はい。まずは住宅の基礎がどうなっているのかについて説明させていただきますね。
住宅の基礎にはいくつかの種類がありますが、主に「布(ぬの)基礎」と「ベタ基礎」という2種類に分けられます。

基礎の種類 布基礎とベタ基礎

布基礎はアルファベットの「T」字を逆さにした形をしていて、その上に家の土台を作って柱を立てていきます。ベタ基礎は、土間(底面)がすべて鉄筋コンクリートになっていて、家を「面」で支える基礎です。

布基礎とベタ基礎とだと作りが大きく違っているように感じます。どういったときに、どちらを選ぶといったことがあるんですか?

はい、建物の構造・重さのかかり方、敷地の地盤の強さに応じて基礎工事を選択します。
木造住宅の場合は、地盤がしっかりしたところでは布基礎でも良いのですが、ベタ基礎は布基礎よりも強度の面で有利なので新潟のように地盤が弱いところではベタ基礎を選択することが多いです。布基礎は逆T字部分にのみ鉄筋を入れていますが、ベタ基礎は底(土間)全面にも鉄筋を入れていますからね。ここも大きな違いです。

建物だけを考えるのではなくて地盤も一緒に考えて基礎を選ぶんですね?

はい、そうなんです。布基礎だと地盤改良工事が必要な現場でも、ベタ基礎にすれば地盤改良工事をしなくても良いような場所もありますよ。地盤改良工事については、また後でご説明しますね。

ベタ基礎は、底がコンクリートでふさがれるのはわかりましたが、ということは布基礎は、床下が土なんですか?

一昔前の住宅はそうです。床下が土だから湿気とシロアリが問題になることがありました。
ただ、この頃は布基礎でも床下の湿気対策・シロアリ対策のために土間部分に防湿シートをしいてから土間コンクリートを打つことが多いですよ。
では、基礎の種類はおわかりいただけたと思いますので、もとに戻って佳織さんから質問のあった「床下と室内がつながっているか?」について説明させていただきますね。

はい。お願いします。

一般的に住宅の床下(基礎の中)は、室内とはつながっておらず、外とつながっています。
どういう事かというと…布基礎の場合には、コンクリートの部分に通気口を作って床下が外とつながっていますし、ベタ基礎の場合には、基礎と土台の間にゴムや金属製の通気パッキンを置いてすき間を作り、外とつながっています。

どうして外と床下がつながっているんですか?

はい、床下の湿気を外へ逃がすためなんです。床下は湿気がたまりやすいですから。
だから、床下と外をつなげて湿気を逃がしているんですよ。それでもカビ等がはえることがありますが…。

なるほど、外の空気を床下に入れて床下の湿気を逃がしているんですね。

そうなんです。床下と外がすき間で繋がっているので、一般的な住宅の基礎は「室外扱い」です。一方、「基礎を室内扱い」にする場合は、基礎(床下)と外はつながっていません。つまり、基礎と外をつなぐ、すき間を作りません。ただし、夏に外の空気を基礎に取り込めるよう開閉式の通気口は基礎に付けておきます。

基礎にすきまを造らない…。
一般的な家の床下の湿気を外へ逃がすのとは、まったく逆の考え方ですね!

そうですね。基礎を室内扱いにした場合、床下の空気は、外とはつながっていません。家の中とつながっています。具体的には、床に「ガラリ」というスリット(通気口)をつくって、コンクリートの基礎に囲まれた床下部分の空気を室内と共有します。
つまり床下と室内は同じ空間です。これが「基礎を室内扱い」にするということです。

ガラリ……ですか?

はい。この写真のように、ガラリは枠の中に細長い板を何枚か組み込んだ通気口です。

ガラリ:床下(基礎内)と室内の空気をガラリで共有

でも、どうしてわざわざ床下を室内とつなげるんですか?

床下を室内扱いにすると沢山のメリットがあるからだよ。
床下に湿気がこもらないから床下に結露やカビが発生しない。乾燥していればシロアリも出にくいからね。湿気がないという事は構造も長持ちすることでもあるんですよね?
もっちゃんのセミナーの受け売りだけど。

はい、松井さんのおっしゃるとおりです。付け加えると…気密も確保しやすくなりますし、さらに床下にエアコン等の暖房(空調)を置くことで家の中を快適な温度しやすくなる。暖房のお話をさせて頂いたときに、床下(基礎の中)に暖房を設置して、それで家じゅうに暖かい空気を回すとお伝えしましたが、このガラリから暖かい空気が各部屋にあがり循環します。

イラスト:床下の空気がガラリを通して室内に循環する様子

ちなみに窓の近くにガラリを付けることで窓の温度低下を防ぐから窓の結露防止にも役立つ。

空気を回すというのは、そういうことだったのですね! あれ、冬に空気をまわすというのはわかったのですが、夏はどうなりますか?

はい、夏場はというと……北側の基礎の通気口を開いて比較的涼しい空気を床下に取り込みます。二階の南面の窓を開けておくことで、暖かい空気が上昇気流となって動くことで、基礎内に取り込んだ温度の低い空気がガラリを通って一階に流れ、二階へと流れいきます。
このように空気を動かすためには、階段や吹き抜け等、空気の上がり口、下がり口、南面の窓の大きさ・位置等、空気の流れを立体的に設計することが重要です。

建物内の上下の温度差を利用して空気を動かすんですね。

そうですね、空気の流れを考えるとことで快適に過ごすことができるんですよ。
もう1つだけ大事なことがあって、床下を室内と同じ扱いにするか、外と同じ扱いにするかによって断熱仕方が大きく変わるということ。
一般的な住宅は、床下を室外扱いにするので床が冷たくならないように床で断熱しています。つまり、床断熱。一方、床下を室内と同じ扱いにする場合は、基礎の立ち上がり部分を断熱材で包み込んで断熱しています。これが基礎断熱。基礎断熱にすることで今までお話してきた「床下を室内と同じ扱いにするメリット」が実現できるんです。

床下を室内と同じにするのは、すごくいいことばかりですね。でも、良い事ばかりだったら他の住宅会社もどうしてしないんでしょうね?

そうですね、基礎を室内扱いにするのは比較的新しい家の作り方で、断熱や気密を常に勉強している会社じゃないと取り入れていないかもしれないね。

そうなんですね。良い技術なら取り入れたらいいのに。

私もそう思います。今後は、断熱・気密も国で義務化される流れになっていきますし、といっても義務化の基準自体がとても低レベルなわけですが…。だからこそ、お客様がより安心して住宅を建てることができるよう私も新潟の業界内に向けて勉強会等、情報発信をより積極的に行っていきたいです。

ぜひお願いします。

先ほど、湿度を適正に保つためには換気が大事とお伝えしましたが、換気に関する説明がまだでしたので、次にお話しさせていただきますね。